なぜブロックチェーンを使うのか ~2023年版~
ブロックチェーンの啓発期がやってくる
ハイプサイクルで言うところの来年くらいがおそらく「ブロックチェーン」の啓発期突入になります。啓発期の先輩でいうと「AI (人工知能)」が存在し、その猛威はみなさんもご存知かと思いますが、テクノロジーが企業にどのようなメリットをもたらすのかを示す具体的な事例が増え始め、理解が広がっていく時期です。
暗号屋が創業された2019年時点ではすでにブロックチェーンは幻滅期に突入しており、今のweb3と言われているムーヴメントと同じくらいの期待度でした。今のweb3がどういったものかと想うと、それほど興味ないビジネスマンはAIの分野に注目しだしているちょっと飽きられている感じの分野ではないでしょうか。暗号屋創業時も仮想通貨バブルが終焉し、ブロックチェーンで起業しようものなら銀行口座すら開けてもらえないという閑散期でもありました。私個人としては前職のMr.Exchangeという取引所がまさに2017年の「過度な期待」の時期に設立され、詐欺が横行する有象無象の中で有ること無いこと言われていましたw
そんな啓発期に突入する「ブロックチェーン」が創るあたらしい経済活動をどのように社会実装すべきか考えている私が、2023年9月時点での考え方をまとめてみました。
ブロックチェーン的な考え方
ブロックチェーンそのものについてはよく「特定の誰かではないみんなで管理する世界でたった1つのデータベース」などと技術を知らない人にはざっくり説明するのですが、ブロックチェーン以前にも分散型のデータベースというものは存在しました。多くはスケーラビリティなど早く安全にデータを利用するための仕組みでした。
しかしブロックチェーンにおける分散は今までの分散とちょっと様子が違います。データを利用するすべての参加者がお互いが改ざんなど悪いことをする前提で一つのデータ管理を行っていくのです。分散と言うよりは「非中央集権」にフェアにデータ流通を行うためのものとして考えるとわかりやすいでしょう。
ではただの「非中央集権なデータベース」になぜこれだけの注目が集まっているのでしょう?
ブロックチェーン的な考え方は責任の分散のために存在している
暗号屋が作っている分散型の仕組みのひとつに「VWBL (Viewable: ビュアブル)」というNFTを持っている人だけがデータを見ることが出来るという仕組みがあります。電子書籍や音楽などのデータを売ることができたり、最近では「渡り鳥ブックス」という面白いコンテンツ流通をNFTでやっているプロダクトで使われています。
このVWBLはどんなデータでも分散管理することができ、最近では2025年の大阪万博で落合陽一パビリオンの「デジタルヒューマン」を管理する技術として採用されました。デジタル上のもう一人の自分という「究極のID」、個人情報を預かることになります。
この様なセンシティブな情報も管理することができてしまうわけですが、この管理をするために誰を信じたら良いのでしょうか?「暗号屋」という怪しい名前の会社に自分の大事な情報を預けたいと思う人が多いとは思えませんし、ブロックチェーンを管理したいというどこの馬の骨かわからない人をできる限り多く自由に参加させるのが正解でしょうか?それよりは身元のわかっている人同士が参加を表明して、すでに信頼された人で構成されるコンソーシアムに認められる形で分散に参加してもらったほうが良いでしょうか?
この様に責任の主体を誰にしたら良いのかを選ぶことが出来るようになったのが「ブロックチェーン」の良いところです。そしてこの責任の分散が行えることにより大きなゲームチェンジが起こっていて、今まで管理が難しかった情報がより手軽に低コストで扱えるようなユースケースが増えて来ています。
余談ですが、ブロックチェーンから生まれたこの責任の分散という考え方はトークンの流動性にも活用されています。IEOなどで新たに生まれてくるトークンの価格を安定させるために、誰でも流動性に参加する仕組みが生まれました。それが Uniswap を始めとする分散型取引所 DEX で標準装備されている AMM (Auto Market Maker) です。
マーケットメーカーというのはトークンなどの流動性を作る人の事をいい、IEOなどではマーケットメーカーが事業者などから資金を預かってその範囲内でマーケット参加者の売り買いの注文が出来るような相手をしています。今までは市場を作るための予算はトークン事業者が用意したお金をマーケットメーカーがお手玉することで客引きをし、見せかけの経済圏がたくさん生まれていましたが、AMMによってそのマーケットメーカーやトークン事業者の責任を分散し、コミュニティだけで価値を創ることが出来るようになりました。( 弊社の Choja でそれが出来ますので是非こちら↓も読んでみてください)
https://medium.com/choja-crypto/choja-in-action-01-choja-%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%AA%E3%81%AB-135f5daf36ee
DX をしたり、プロトコルを実装する時に便利である
DXについての話になったとき「DXは脱サイロ化と言い換えるとわかりやすくなる」とよくお客さんに言ったりします。データの扱い方のルールを共通言語化するためにDXをするのだと、DXだと言う人達の目を覚ましつつゴールを示していきます。
あとはデータの扱い方のルールを共通言語化するということを「プロトコルを作る」と言います。結構頻出なので是非覚えてください。世界中の人と話をする時に英語を選ぶように、共通言語としてコンピュータ同士だったりアプリ同士は普段どのプロトコルで喋るかを決めてやり取りをしています。
世界で一番使われるプラットフォーム vs 標準化されたプロトコル
企業の活動としてプラットフォーム戦略を取っているところがほとんどだと思います。それは企業活動として稼ぐために取る手段としてわかりやすいからなのではないでしょうか。しかし iOS と Android だけを見てみても世界を2分割しているように 100% シェアのプラットフォームというものは非常に難しいと思われます。
対してプロトコルは今 https を用いてみなさんがこの記事を見ているように、世界標準化されたプロトコルを利用するだけなので世界共通でそれを手軽に利用することが出来ます。
僕は便利でよく使っていますが日本は Paypay のようなキャッシュレス決済が様々なところで使えますが、彼らのようにローラー作戦で営業し、バラマキを行ってユーザー数を獲得するパワープレイをすることはソフトバンクのような企業なら可能なのかもしれませんが、戦略として参考にし易い人は少ないと思います。
またプロトコルを広めていく上でインフラのように機能する事業者のことをイネーブラー (Enabler) と呼びます。例えば HTTPS の SSL 証明書発行はプロトコルの仕様に則ったビジネスですが、それを1社独占ではなくその規格を広めるために様々な事業者がイネーブラーとして参画しています。
マーケティングコストを下げるべくプロトコルをうまく扱うことで、ブローカー (代理店) として同じプロトコルを使うイネーブラーを招致し、例えば自社イネーブラー以外から増えたユーザーも自社のためにデータ活用することで、最終的にプロトコルのシェアの向上につなげることができます。
まとめ
ブロックチェーン誕生により、ブロックチェーン的な分散という考え方が生まれ、それはフェアな新しいプロトコルを生み出すことが出来るとわかりました。また柔軟な設計が出来るようになったプロトコルは、巨大なプラットフォームを作る戦略以外に、様々な人が同じ共通言語を用いてデータや価値の流通を行うための巨大なインフラとして広めていくという手段をもたらしました。
2023年時点での考えをまとめてみましたが、基礎は DEX をベースにした仮想通貨取引所の設立を行った 2017年、もしくは Ethereum が誕生して Blockchain 2.0 ともてはやされていた時期から変わっていません。様々な事業者との対話を通じて言語化はかなりできていていると思いますし、これが啓発期前夜か、という気分になれました。
また時間を置いて似たような記事が書けたらなと思います。また数年後にお会いしましょう!